東北シェフの活動5

投稿日:2011年6月22日 投稿者:sot

■「 “ つながる ” ということ」

 

かとうレポート7

 

東北シェフ達の被災地での活動は、だんだんと現地の方々との関係が密になってきました。
6月14日、アル・ケッチァーノの奥田シェフが向かったのは南三陸町。
ひと月ほど前、ある出会いがありました。
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5月18日。
奥田シェフは三陸海産物の被害の実態を知りたいと南三陸町で一番大きな港の志津川(しづがわ)漁港に
やってきました。
そこで出会ったのが「しづがわ牡蠣工房」の工藤忠清社長でした。
壊滅的な打撃を受けた牡蠣やわかめの養殖でしたが、この一週間前から工藤さんは、養殖業に携わる
漁師の皆さんと漁船を出して湾内に漂う漂流物の片付けを始めていました。
その船に奥田シェフを同乗させてくれたのです。

 

湾内には浮きや漁船やロープ等がごちゃごちゃにからまった漂流物があちこちに浮いています。
その中から使える物を回収するのが目的です。
作業をする中でこの日、震災後初めて、かつて養殖していたわかめと牡蠣を見つけました。
漂流物に養殖のロープが引っかかっていたのです。
「オー!生き残っていたぞー。」
それまで全てを失い途方に暮れていた漁師の皆さんの表情が、笑顔に変わっていました。
養殖棚は失われたけれど、養殖してきた牡蠣はおそらく海底にいるだろう、そんな予測も見えてきました。
船でその様子を見ていた奥田シェフは、そこで思いついたのです。

 

「5月31日に東京でチャリティービュッフェがあります。
そこにここの牡蠣を10キロ送ってください。」
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5月31日。
『第一回 ソウルオブ東北』開催日、工藤さんは、有名シェフが一堂に会すると聞いて、
注文した牡蠣とともに南三陸町から車でやってきてくれました。

 

「 “ 欲しい ” って言ってくれる人がいれば、自分たちも胸はって “ 作りたい ” と言える。」(工藤さん)

 

ソウルオブ東北にとっても、生産者の方にご参加いただく事は大きな励みとなりました。110622_7_11

 

 

 

 

 

 

 

 

[左から4人目:会場で挨拶をする工藤さん]
[左から2、3人目:社員の方々]

 

その牡蠣を使って奥田シェフのつくった料理は、お湯にくぐらせた牡蠣に生の春菊とグリッシーニを
そえたシンプルな一品。
牡蠣と春菊の苦みがあいまって生まれる味わいの中に、最上質のオリーブオイルで炒めたグリッシーニの
サクサクした食感と香ばしさが加わりいっそうコクが深まる、なんとも不思議な一品となりました。
お客さんの反響も上々。ビュッフェも盛会となりました。
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「牡蠣を持って東京まで来てくれたお礼に行きます。」

 

6月14日。
奥田シェフは日本橋の天ぷら「小野」のご家族と共に、志津川漁港の “ 番屋 ” で炊き出しを行いました。

 

会場には地域の漁業関係者と、周辺でがれきの撤去作業を毎日行っている住民の皆さん200人ほどが
集まってくれました。
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メインは地元の牡蠣を使った天丼、そしてカレーとサラダ、サントリーさんの提供でワインも
振る舞われました。

 

この地域の人たちに、自分たちの海で育った牡蠣を食べてほしい。
そしてまた営みのある海をつくっていってほしい。

 

それが奥田シェフの願いでした。

 

「あったかい天ぷらはやっぱりうまいなー。」「私たちここで毎日牡蠣むきしていたんだけど、
牡蠣食べるのは3ヶ月ぶりだわ〜。」
地域の皆さんは、とても喜んでくださいました。
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[左:奥田シェフの友人の辰巳琢郎さん。]
[右:天ぷら「小野」の志村さん。]

 

 

後片付けをしていた奥田さんの目の前に、漁師の渡辺剛さんが発泡スチロールの大きな箱を持ってきました。
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「これ、みてごらんよ。」
あけてみると、ウニやアワビがいくつも入っています。
渡辺さんたち漁師の皆さんが酸素ボンベをつけて海に潜り、海底の調査をした際に採取してきたのです。
「奥田さん、海は生きていたよ。」

 

ひと言そう言った渡辺さん、日焼けした顔に力強い眼差しが光っていました。

 

「作る人と食べる人の真ん中に料理がある。だから料理人は、人と人をつなぐ事ができる。
志津川の漁師の皆さんは、“欲しいと言ってくれる人がいるから、俺たちもやれる”と言ってくれた。
僕もその思いを一緒に実現したい。」(奥田シェフ)

 

奥田シェフと志津川の海の男達の交流は、この後新たなつながりへと展開してゆきます。

 

(かとう)

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