レストランオーナーさんの三陸ツアー

投稿日:2013年4月16日 投稿者:sot

昨夜のうちから花巻に入り、ロレオールの伊藤さんとほろほろ鳥の石黒さんと明日の打ち合わせをしました。伊藤さんは漁協さんからの強い要望もあり、牡蠣やホタテを現地で料理するので、車に鉄器やら食材やらを積んでやってきました。伊藤さんは岩手の生産者さんたちの救世主なのです。

 

今回はソウルオブ東北のシェフツアーと同じように、東京のレストランオーナーの方々と三陸や岩手の生産者をまわります。初めて岩手にいらっしゃる方々も多く、岩手が本当にまだまだ未開の土地であることを感じます。日本の地方の多くがこのような状況だと思います。もっともっと地域の魅力を伝える努力をしなくてはと思います。

 

新花巻の駅から、釜石へと向かいます。道中、東北の現状や水産物の現状をお伝えします。また質問などにお答えしながら約3時間で釜石に到着しました。

 

〈釜石の漁業の紹介〉

 

震災前(平成21年度)の釜石の漁業生産額は約51億円でした。このうち大型船でサケやサンマ、イカを漁獲する「漁船漁業」が50%、地元の個人経営体(漁業者)が水揚する「養殖業」と「採介藻漁業」はそれぞれ34%、16%となっています。個人経営体である漁業者の収入は、ワカメ、ホタテガイ、マガキ、コンブ等の「養殖業」と、アワビやウニ等の「採介藻漁業」の依存度が高く、これらは地域の漁家にとって最も重要な漁業種類となっています。東北太平洋沖地震及び津波により、養殖施設、漁船、作業施設のほとんどが被災し、生産基盤に壊滅的な被害を受けましたが、この2年間の関係者の懸命の努力により、養殖施設は震災前の60~70%、漁船は同じく50~60%前後まで復旧しています。

 

最初にお伺いするのは、釜石湾漁協白浜支所です。

 

〈釜石湾漁協の紹介〉

 

釜石湾漁協(正組合員数527名)は、釜石市の中央に位置し、釜石湾全域と唐丹湾の一部を漁場としています。正組合員の多くは、ワカメやホタテガイ、カキ、コンブ等の複合養殖とアワビ、ウニの採介藻漁業で生計を立てています。釜石湾漁協で生産されるカキは、殻付一粒カキ(生食用)として主に築地方面に出荷されています。甲子川が運んでくる北上山地の山々の栄養分が流れ込み、豊かな漁場となっている釜石湾で育ったカキは尾崎カキのブランド名で築地でも高い評価を得ています。 尾崎カキは、主産地である白浜浦地区のある尾崎半島から命名されたものです。震災後、養殖カキの出荷は昨年10月から再開しており、2シーズン目となる平成25年~26年の出荷分は、震災前と同じ水準である150万個程度を計画しています。

 

ここは、伊藤さんが震災直後の3月28日に尾崎白浜の避難所に食料を運んできたところです。その時は本当に皆さんが大変な時で、地域内の400人の食事を地元婦人会の皆さんが交代で食事を作っていました。それ以来の訪問となりました。

 

今回は、カキ養殖漁場まで船に乗せてもらいます。震災から三陸に入って2年がたちますが、こんな経験は初めてです。ここまでカキ漁が回復してきたのだとうれしく思います。ライフジャケットを着て、カキ棚に向かいます。三陸の海の景色は本当にフォトジェニックです。海の水面から急に切り立った森。森と海が近いのです。森と海が織りなす複雑な地形が三陸の水産物を育っているのです。皆さんも「きれいな海だねぇ」と口を揃えて、三陸の美しい海をほめてくれました。まずは養殖のほやを組合長が引き上げてくれました。ホヤは見た目から海のパイナップルと呼ばれています。垂下式ロープに海の赤いパイナップルが数珠つなぎになっています。若いホヤたちが水鉄砲のように一斉に海水を吹き出します。それだけでも歓声があがります。組合長がホヤを割って身を取り出してくれました。そのオレンジ色の身が太陽の光にきらきらと反射して美しい。さっそく一口、頂きます。とろっとのどに滑り込むその身の味は、くさみなどなく、苦みもなく、固さもなくほのかな甘みさえ残る三陸の海水に溶け合ったまぎれもなく「新鮮」という味でした。初夏になったら出荷されるとのことでした。

 

ホヤの後は、網にはいったカキを取り上げます。昆布がびっしりとついた網は重たそうです。昆布がつきすぎると中にプランクトンが入って行かず、カキも酸欠になってしまうそうです。昆布がつきすぎて沈んだブイを見つけて、昆布をまびくそうです。何でも手入れが大変です。漁師さんの説明を伺いながら、船上視察は終わり漁協に戻ります。

 

漁協では、水産物の試食を兼ねて、漁師の皆さんと漁協の方々とレストランオーナーの方々との懇親会が行われました。テーブルには、ナマコ、メカブ、ホタテの卵巣と精巣が並べられていました。メカブは手切りと機械切りの2種類が並べられていて、手切りのメカブの緑色が鮮やかなことに驚きました。どれも新鮮なものばかりで、漁師さんが「やっぱ魚、貝の料理は刺身だな」と言うのもわかります。皆さんが地元釜石のお酒、浜千鳥を入れたカキの酒蒸しを運んできてくれました。自己紹介から始まりましたが、普段滅多にお会いすることのない職業の方に漁師さんたちはこちこちです。しかし、こんな機会はめったにありません。是非、皆さんの大事な殻付きカキをアピールしてください。いやいや組合長から離してくれえばぁとどんなに背中を押してもなかなか席を立とうとしません。しかし浜千鳥が入ったころから、お話しをどんどんしてくださいました。三陸の漁師はシャイなのです。皆さんも積極的に話しをしてくださり、助かりました。

 

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伊藤さんが、カキのソテーとカキの炊き込みご飯、カキとホヤの炊き込みご飯を安倍自然農園の自然栽培農法のお米でつくってくれました。素材の新鮮さをさらに生かす工夫を料理と呼ぶのだと思います。

 

最後は、皆さんがお取引ができるように、漁協の参事さんに今後の事をお願いしてお別れします。

 

次は少し北上して釜石東部漁協へお伺いします。

 

〈釜石東部漁協の紹介〉

 

釜石東部漁協(正組合員数550名)は、釜石市の北側に位置し、大槌湾の南側と両石湾全域を漁場としています。 正組合員の多くは、ワカメやホタテガイ、カキ、コンブ等の複合養殖とアワビ、ウニの採介藻漁業で生計を立てています。釜石東部漁協は、岩手県有数のホタテガイの産地で、震災前の平成21年度は県内一の生産量でした。震災後は、同年の秋に北海道から稚貝を購入して養殖を再開し、昨年9月から出荷を開始していますが、本格的な再開となる今漁期は、約300トンの出荷を見込んでいます。

 

〈岩手のホタテガイ生産の紹介〉

 

震災前(平成22年度)、岩手県の養殖ホタテガイは、全国4位の生産量でした。三陸の豊かな海で育った岩手県産のホタテガイは、北海道や青森県産と異なり大きな貝柱が特徴です。出荷に際し貝毒検査が必須となっているホタテガイは、全て県漁連を通じた共販制度により販売されています。

 

東部漁協は、2011年10月にフランスレストランウィークの企画で、アランデュカスとともに伊藤さんが支援に訪れたところです。遠くはフランスからフレンチの巨匠が復興を祈って料理をしてくれました。2012年9月22日にもフランスレストランウィークのイベントを行いました。伊藤さんにとっては馴染みの深い漁協さんです。

 

東部漁協では、ホタテの養殖場を見に行きます。二度目の船での視察です。湾内にはひょっこりひょうたん島のモデルにもなった赤い灯台がある蓬莱島が見えます。懐かしい島のある風景にひょっこりひょうたん島の歌を口ずさみたくなります。岩手県には物語になる土地が沢山あるのです。この半島をまわっていくと、井上ひさしの小説、「吉里吉里人」と同じ名前を持つ吉里吉里です。

 

組合長がホタテの説明をしてくれました。ホタテの稚貝は北海道の日本海側の留萌と増毛から持ってきているそうです。死滅が少なく三陸の海と相性がよい稚貝を試行錯誤をして選んでいるとのことです。20メートルのロープにはホタテが120〜150個くらいついているそうです。ホタテの殻にはムール貝やホヤなどもくっついています。ムール貝は、天然で海の底にはとても大きくなったムール貝がいるそうです。

 

漁協に戻り、漁師の皆さんと組合の皆さんとで試食と懇親会をします。組合長さんにも私たちの席に入っていただきホタテの話をしていただきます。テーブルには見たことのないほど大きなムール貝、ホタテの殻焼き、メカブ、そして、伊藤さんはホタテのソテーと鮑の丸焼きとナマコの炙り焼きをつくってくれました。ホタテには先ほど採ってきたワカメをすりつぶしたソースがかかっています。どれも穫れたてのごちそうです。再び皆さんには、浜千鳥がはいっていい感じです。名残惜しくも帰る時間となりました。またの再会を願って記念撮影としてお別れしました。

 

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当日お帰りになる方々のために、水沢江刺の駅を目指してバスは出発します。途中バスが故障するなどのアクシデントはあったものの無事、新幹線までお送りし、次に一泊組はロレオールへと向かいます。伊藤さんは一日中大活躍です。

 

伊藤さんのおすすめ岩手ディナーは、次のようなメニューでした。

 

・干し柿とチーズのアミューズ

 

・八幡平サーモン

 

・東部漁協のホタテとちぢみほうれん草のソテー

 

・釜石湾漁協と宮古のカキの食べ比べ

 

・ほろほろ鳥の砂肝、胸、もものロースト

 

・柳川の子羊のロースト

 

・岩泉の短角牛と前沢牛の食べ比べ

 

・カキの殻のグラタン

 

・デザート

 

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岩手の味を満喫して皆さんにも満足いただきました。食事をしながら東北の食の話、放射能の話、思い思いに皆さんの食に対する思いを夜遅くまで沢山聞かせていただきました。こうしてお話しをいただくことで東北への関心を深めていただければ、東北の復興も早まることと思います。(理事長 岡部泉)

 

岡部泉

 

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