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いわて 里山食物暦【さかな】サンマ
 

お彼岸の頃、脂ののったサンマたちが三陸を目指す

お彼岸の頃、急に三陸の市場が活気づいてきます。この時期から冬に入るまでが三陸の勝負どきなのです。
8月に解禁となるサンマ漁は、9月から11月が最盛期。夏にオホーツク海や北海道東方沖で成長したサンマの群れは、親潮とともに三陸沖に南下します。サンマは光に集まる習性があり、これを利用した「棒受け網漁」で、日没から夜明けにかけて漁が行われます。真っ暗な夜、三陸沖にやってきたサンマの群れを発見すると、船の集魚灯を点灯してサンマを集めます。そこで棒受け網を設置し、消灯と点灯、そして光の色をコントロールすることによって巧みに網の中にサンマの群れを誘導して一気にすくいとるのです。
 
秋の味覚の代表といえるサンマですが、特に9月までに水揚げされたものは脂がのって大ぶり。
朝7時、漁港に船がつき、漁師が魚倉のフタを開けると、大量のサンマ。船に設置されたクレーンに大きなすくい網をつけ、魚倉からサンマをすくっては岸壁に置かれた台の上に運ぶ作業をくり返します。サンマは台から細いレーンに流され、レーンの両側に並んだ人たちが、大きさや混ざっている別の魚を素早く選別し、どんどんカゴに分けていきます。
買い付けられたサンマは、選別場に運ばれます。ここでも手際よく、女性たちがサンマを一尾ずつ選別機に載せていきます。機械が自動でサンマの重さを量り、120~140、140~160、160~180、180~200、200UPとグラムごとのカゴに自動的にシュッ、シュッと選別していきます。
 
新鮮なサンマの口先は黄色く、目は黒く澄んで、体はキラキラ輝いています。その日のうちに、氷詰めにされたサンマは全国に出荷されます。
 

サンマ2
さんま3

 
■主な産地/三陸沖
■水揚げ最盛期/10月初旬~11月初旬
■生態と特徴
 ダツ目サンマ科サンマ属の魚。オホーツク海南部以南の日本各地と東シナ海、およびアラスカからメキシコまでの北太平洋に分布しています。「サンマ」という和名の由来は諸説ありますが、「サ(狭)」に起源があるとして「細長い魚」を意味する「サマナ(狭真魚)」が「サマ」→「サンマ」に変化した説と、大群で泳ぐ習性から「大きな沢」を意味する「サワ」+「魚」からなる「サワンマ」を語源とする説の2つが有力視されています。
 体が細長く、上下の顎は口ばし状で、下顎が上顎より突出した形状。背びれと尾びれは体の後方にあり、しなやかに泳ぐ魚です。寿命は1~2年と考えられ、体長は最大で40cmほど。海の表層を群泳し、動物プランクトンを食べながら成長します。捕食者から逃げる際には、トビウオのように水面から飛び出して滑翔することも。サンマの適水温は10~20℃とされ、夏には北千島やオホーツク海の亜寒帯域まで北上して多くの餌を食べ、8月中旬以降水温の低下に伴って南下を開始して産卵場に向かいます。産卵は秋から春までで、秋および春には黒潮と親潮のぶつかるところ、冬には黒潮の流域に漂う流れ藻に産み付けます。
 漁は、群れを対象とする流し網漁や、光に集まる習性を利用した棒受け網漁によって行います。棒受け網漁は敷き網漁の一種で、表層の魚群を一度に漁獲するのに適した漁法です。旬は秋ですが、漁期初めから9月にかけてが大型魚主体となり、魚群の南下に伴って漁場も南下し、表面の水温が12~18℃の海域主な漁場で、8~9月が北海道東方沖、10月が三陸沖、11月には常磐沖が主な漁場となります。そして漁期が進むにつれて小型魚の割合が高くなり、10月以降は中・小型魚主体となります。漁期終盤のサンマは脂肪分の少ないものが増えます。鉄分やドコサヘキサエン酸を多く含み、血合いにはビタミンDなどの栄養分も豊富な魚です。
日本の代表的な「秋の味覚」として知られ、塩焼きに大根おろしを添えた食べ方が一般的。サンマは腸が短く、餌を食べてから排出するまでの時間が約30分と短いため、内臓にえぐみが少なく、肝を好んで食べる人もいます。
 
■代表的な調理法は塩焼きですが、三陸産は生の刺身でも美味。晩秋に脂の抜けたサンマは干物や燻製にも用いられます。
 

サンマのポワレ
サンマの刺身

サンマ塩焼き

いわて 里山食物暦【さかな】戻り鰹
 

成熟した鰹は秋にやってくる
三陸の鰹の旬は秋

「目には青葉山ほととぎす初鰹」と江戸中期の俳人山口素堂の句に詠まれている様に五月は初鰹の季節。「女房を質に入れても食べたい初鰹」などというほど、初物好きの江戸人は好んで食べたと言います。しかし、三陸人にとって、鰹の旬は秋。もともとは南国の魚である鰹は、いわしを追い求め北上し、南下する秋頃に、北の海域でたくさんの餌を食べて脂がのった成熟した大人の戻り鰹になるのです。
三陸沖で漁獲された戻り鰹は、直火で表面を炙り、旨味を閉じ込めます。生姜やニンニクなどの薬味が不要なほどその身は、臭みがありません。その脂は鮪のトロにも匹敵するものです。
 

■主な産地/三陸沖
■水揚げ最盛期/9~10月
■生態と特徴
スズキ目サバ科カツオ属の魚。鰹という和名の語源は、身が堅いという意味の「堅魚(かたうお)」に由来するという説が有力で、日本では古くから食され、大和朝廷がカツオの干物(堅魚)などの献納を課していたという記録も残っているほどです。
北緯40度から南緯40度に至る全世界の亜熱帯海域に分布しており、日本には主に黒潮に沿って回遊してきます。生きている時の体は美しい青紫色ですが、興奮すると腹側に横縞が浮き出て、死ぬと横縞が消え、銀色に黒っぽい縦縞が現れて、見た目の色が変化します。同じカツオ類でも、ヒラソウダやマルソウダ、ハガツオには縞模様が出ないことから、この見た目によって区別されています。体は遊泳に適した紡錘形で、沿岸から沖合の表層を、群れを成して弾丸のようなスピードで泳ぎます。日本近海には餌を求めて来遊し、小魚やイカ類を食べて育つ大型の肉食魚ですが、マグロやカジキ類などからは魚には逆に食べられています。また、ジンベエザメや流木に群がって泳ぐことがあり、これはカジキなどからの攻撃を避けて身をまもるためと考えられています。これを漁師は「木付き」「サメ付き」などと呼び、漁の際の目印にします。特に「サメ付き」は良く釣れることから、ジンベエザメは漁師からエビスザメとも呼ばれ、大事にされています。
三陸沖では初夏に北上してきた群れが獲れ始めますが、旬は秋、南に下る「戻りガツオ」のシーズンです。三陸を中心とした東北地区の海域は、暖流の黒潮と寒流の親潮がぶつかり合う最も漁獲量の多い魚場で、一本釣りか巻き網などで漁獲され、三陸の港はこの時期、賑わいの最盛期を迎えます。三陸の秋の戻りガツオは低い海水温の影響から脂ののりも良く、春のカツオと異なり、成熟したカツオと言えます。
 
■鉄分やナイアシンを多く含むカツオの身は、加熱するとパサついた食感になるため、刺身やタタキで食すのがポピュラー。稲藁を燃やした火で皮ごと炙ってから冷水で締めます。初鰹は、厚めに切ったショウガ、ニンニクなどの薬味と共に口に運ぶたのが普通ですが、秋の戻り鰹は臭みがないので、薬味要らずの「鰹のタタキ」なのです。地元の人々にとっては「秋」を実感する一品です。

戻り鰹2

 

戻り鰹たたき1
かつお回遊図
戻り鰹たたき2

いわて 里山食物暦【さかな】カキ
 

森が育てる海の玄米、牡蠣

森は海を海は森を恋いながら
悠久よりの愛紡ぎゆく
 
気仙沼市在住の歌人、熊谷龍子さんは、牡蠣が森によって育てられていることを美しい歌にしました。海水と河川水の交わる汽水域での生物を育てるには、上流の森を通過した河川水や地下水が運んでくる養分が重要です。おいしい牡蠣やホタテは、山や森や川が運ぶプランクトンやミネラルがあってこそなのです。
現在は、唐桑の牡蠣養殖家である畠山重篤氏を代表とし「森は海の恋人」というスローガンと共に、子供たちの環境教育にも尽力し、全国にその運動の輪を広げています。
 

カキ2

■主な産地/三陸沖
■水揚げ最盛期/冬
■生態と特徴
カキ目イタボガキ科マガキ属の貝で、正式名は「マガキ」。和名の「かき」は、密集している貝を掻きとることが語源と考えられています。日本全土と東アジア全域の汽水性内湾の潮間帯から潮下帯の砂礫底で、しばしばカキ礁を作る二枚貝。通常は、岩や他の貝の殻など硬質な基盤に着生します。ホタテガイと並び、重要な養殖貝でもあります。性転換する貝として知られ、十分に栄養分を蓄えた雌が産卵し、産卵後は雄になってしまいます。つまり、栄養不足で痩せた雌が雄ということになります。着生してからほとんど動かないため、筋肉が退化して身のほとんどを内臓が占めています。
食用としての歴史は古く、日本では縄文時代以降の多くの貝塚から殻が発見されていて、室町時代頃にはすでに養殖も行われていました。ただ、かつては産地から消費地までの輸送に時間がかかったため、生食は産地以外で一般化しませんでした。日本人がカキを生で食べるようになったのは明治時代以降で、生食文化が欧米から輸入された珍しい食材です。
 牡蠣の旬は冬であり、三陸では岩手県南部の広田湾と大船渡湾が、上質で旨い牡蠣の主産地とされます。味の秘訣は三陸の豊かな森にあり、森が育む栄養分を含んだ水が川を経由して三陸の海にそそぎ、牡蠣を育てます。また、ヨーロッパでは月名にrの付かない5~8月には食べないと言われます。日本では「花見すぎたら牡蠣食うな」の言葉があり、これは産卵期の生殖巣が傷みやすいためと考えられていますが、三陸では「花見ガキ」(宮古市)の名で5月まで食べられます。
 ヨーロッパでは「海のミルク」、日本では「海の玄米」と呼ばれるほどの滋養強壮食品とされ、健康維持に有効とされるタウリンや、効率的なエネルギー源となるグリコーゲン、各種ビタミンなどをバランス良く含んでいます。また、殻の表面にはカミソリの刃のように薄い形状のものが重なっているため、生食で殻を持つ際には、気をつける必要があります。

■レモンや酢とともに摂取すると、ビタミンCやクエン酸がミネラルの吸収を高め、タウリンが失われるのを防ぐ効果があるとされます。一般的には生で食すほか、蒸すと濃厚な旨みが凝縮され、鍋やフライ、殻ごと焼いても美味。さらに、カキ醤油やカキ油など調味料の原料としても用いられます。

 

カキ3
カキ4
カキ5
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