三陸の夏はウニ漁とともにやってくる
ウニ漁は、漁業協同組合の生産部長が浜に出かけ、潮や天候を見て翌朝行うかを判断します。
今日はウニ漁を行うことになったようです。日の出を背に笛が鳴ります。
一斉に、ウニ漁が始まります。いそ舟と呼ばれる小舟に2人でのり、箱眼鏡を口とあごで押さえながら、海底をのぞき海の底に静かな波とともにゆらりゆらりと揺れるウニの姿を目をこらして追います。わかめやこんぶの間に身を潜める海中の黒い太陽のようなウニに、漁具を差し込んでいきます。漁具は地域によって異なりますが、「たも」と呼ばれるかごや、「カニ」と呼ばれるひっかけです。どの漁師も一切口をきかずにいち早くいち早くウニを取らんと舟を操ります。終了の笛が鳴り、今日の漁はおしまいに。ウニとの戦いは4時間ほど。舟に積まれたかごには、黒いウニの山。その日の勝者が浜にあがると明らかになります。
ウニ漁が終わるとすぐに浜にあげ、家族で殻むき作業に入ります。ウニの卵巣は5つに分かれています。3対2に分かれるようにウニの底にある口にウニ専用の小刀を差し込み殻を割ります。これには長年の勘が必要です。殻を割ったら中身を素早くチェックし、サイズ別に分けて行きます。腸管や黒い内蔵を取り出した後、殺菌した海水で良く洗い金属のヘラで身を取り出します。そして、生食用の清浄海水入りのびんやタッパーにいれて完成です。
子供の頃から自分の浜のウニを食べている漁師は、誇らしげにこう言います。
「うまいウニは、うまいこんぶとわかめが育てるのさ」と。
■主な産地/三陸沿岸
■収穫時期/6月から8月(お盆前)
■生態と特徴
ウニとは棘皮動物門ウニ綱に属する生き物の総称で、食用といなるのは主にホンウニ亜目の「ムラサキウニ」や「バフンウニ」、「キタムラサキウニ」、「エゾバフンウニ」などです。こうしたウニはやや扁平な丸い形をした硬い甲羅に棘が沢山付いています。三陸で穫れるウニはほとんどがキタムラサキウニです。身がやや白いことから「白ウニ」と言われます。全体の9割を占め、残り1割がエゾバフンウニです(色が赤いことから赤ウニと言われます)。
ウニは日本各地の沿岸で獲れ、北海道だけでも一年を通してどこかで漁が行われ水揚げがあり、通年市場に出回っています。ウニは産卵期を控えた頃が最も実入りがよく美味しくなるのですが、産卵期は海域や種類によっても多少違いがあるものの、おおむね8月中頃から10月にかけてとされています。(釧路地方は冬)生きたウニは漢字で表すと「海胆」または「海栗」となります。「海胆」は海で獲れるウニの中のオレンジ色をした「肝」を食べると言う意味ではないかと思われます。また、「海栗」は外見が毬栗(いがぐり)の様に見えるからでしょう。このウニを塩漬けにされた雲丹は日本の三大珍味の一つとして知られています。産卵期は夏から秋で、産卵された卵はその後幼生となり30日間浮遊生活を送り海底に沈着します。沈着した稚ウニからコンブやわかめ、アオサなどの海草類を食べて育ちます。漁獲される5㎝以上のウニになるには3年かかります。それゆえにウニを増やすために漁の日や時間を定め、適正漁獲を行っています。
ウニは、殻を割り、殺菌処理をした清浄海水で内蔵を洗い流し、スプーン状の器具で丁寧に身を取り出し、内蔵をさっとあらいながし、生食用の清浄海水入りのびんやタッパーにいれて販売します。北三陸では牛乳瓶が多く南三陸ではタッパーが主流のようです。
■食べ方
生食のほか、塩ウニにしたりアワビの貝殻にのせて焼きウニ(実は蒸しウニ)に加工します。三陸ならではのウニの食べ方に「いちご煮」があります。結婚式などのハレの席に欠かせない吸い物で、鮮やかなウニの身を湯に入れると花が咲くようにふわっと広がり、野いちごのように丸くなることからこの名がつけられたとも言われています。