海からの冷風、山背で育つ 北の葡萄
山ぶどうは、野生天然の葡萄で、北海道、東北の北部の山の奥に自生しています。自生地は笹や雑木が混み合った、人をあまり寄せ付けないような場所が多く 採取は困難です。独特の酸味が特徴です。
岩手県は、全国一の山ぶどうの生産量を誇ります。山ぶどうの栽培は、天然の良質な山葡萄を選抜し、苗木を育てます。山の緩斜面に、垣根のように実をつけたぶどうの木を並べます。ぶどう棚はなく、支柱を立て、間隔をあけて栽培しているので、日当たりがよく風も通ります。
支柱には横に誘導線が張ってあり、上部3分の2ほどのところにツルが絡むようになっています。
山ぶどうは、山の空気・水・土、初夏には太平洋からの涼風「やませ(山背)」によって熟成していきます。9月下旬から10月にかけて山ぶどうが旬を迎えます。糖度を15%以上に高めて収穫される熟成した山ぶどうは非常に色の濃い果実となります。
山ぶどうは地元ではおなじみの秋の味覚で、家庭では、ジュースにすることが多いとか。小さな粒をつぶし、布でこしてつくるそうです。何も加えず、手間をかけてつくる天然果汁100%のジュースは美しい紫色。口にすると、さわやかな甘さと酸味、そして少しの渋みが広がります。
加工品とはジュース、ジャムなどがポピュラーです。最近はワインもつくられています。
さらに、鉄、ポリフェノール、カルシウムなどの栄養素の抽出により健康食品として開発が進められています。
その他の利用法として、山ぶどうの果汁の絞りかすを堆肥として利用したり、蔓を使った篭細工などの工芸品にも使われます。