日本のチベットと言われ 秘境の地大根
安家は、日本のチベットと言われ、岩手県の中でも山深いところです。北上山地の深い山々に囲まれた美しい山村で、清流・安家川に沿って集落が点在しています。アッカとはアイヌ語で「水の湧くところ」という意味なのです。
そして、安家は短角牛の里でもあります。牛と人と野菜、まさに里と山の暮らしがここ安家には根付いています。雪の深い安家の長い冬を乗り切る大切な食物として、安家の地大根を語らずにはいられません。
赤い着物をきた大根です。中まで赤いものもあれば白いものもある。まさにその家の畑の土との反応なのです。一度は、青首大根に押されて無くなりかけた大根ですが、地元の有志が立ち上がり、この大根を復活させました。今ではそれぞれの家の畑で作られています。辛味があるので、生ですりおろせば、そばの薬味に。しかし、煮るとこれが不思議なことに、辛味が消えて甘い大根に。水分が少ないせいか煮くずれることもないので、ステーキにしても良し。また冬の保存食として「凍み大根」を作ります。また、葉っぱは、捨てずに「干し葉」にして人や短角牛のビタミン源として活用。水分が少なく繊維質が強くゆえに固い大根です。野菜としては食べづらく、欠点と思われがちな特徴が、この極寒の地では、保存食としては最適な条件であったのです。その甘みが冬の暮らしにほっと息をつかせる根菜です。
2005年11月、スローフード協会(本部イタリア)が日本で最初の「味の箱舟」九品目の中に安家地大根を選んだことから、地元では「安家地大根保存会」が発足し、未来へ伝えるべき食の宝物として、現在では広く知られるようになっています。
※Photo/岩泉産業開発HPより
【安家地大根】
■主な産地/岩泉町 安家地区
■特徴
岩手県、岩泉町の安家地方を中心に代々、各家で大切に栽培されてきた伝統野菜です。
安家(アッカ)という地名はアイヌ語の「清らかな水の流れるところ」に由来するといわれ、地大根は「ジデエコン」の呼び名で土地の人々の貴重な保存食として、その食生活に深く関わってきました。
色は鮮やかな紅色したものが多く、肉質は極めて硬く繊維質に富み、そのまま食すと辛みがすこぶる強いのが特徴です。現在、ちまたに流通している青首大根とは、趣を全く異にする、この地特有の大根です。なぜなら、安家地区の冬の寒さは厳しく、氷点下10度以下でも貯蔵できる安家地大根は、冬の貴重なビタミン減として、欠かせない保存食だったからです。水分の多い青首大根だと、凍結し、解けた時に腐ってしまいます。
含有するビタミンCは青首の1.5〜2倍もあるとされ、それ故にこの地方ならではの寒く厳しい冬には欠かせない保存食材のひとつとされてきました。
最も多く利用される加工方法が、安家川のきれいな水を使い大根を凍らせて作る「凍み大根」。皮をむいた安家大根をゆでて縄に通し、束ねた大根を2時間程川の水につけ、アクを抜いたあと、冷たい外気にさらしながら少しずつ乾燥させると、約ひと月でできあがります。他の野菜や食材と一緒に煮て食すと、煮汁がよくしみて食感も味わいもことのほか美味。
2〜3年も保存可能という優れものでもあります。
■食べ方
「凍み大根」の他に、「切り干し大根」や葉を干した「干葉」などの保存食としても利用されています。いずれも水やお湯につけて戻すことで独自の食感と旨みを生み出します。
また、大根おろしや甘酢漬け、大根田楽など様々な食し方で地元安家に愛され続けています。