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いわて 里山食物暦【山食物】短角牛
 

フリーな牛 スローな牛

短角牛は、放牧型の自然共生型畜産として注目を浴びています。自然交配で仔牛を生み、子育ても上手な牛です。夏山冬里といって、夏は山に居てのんびり草を食べ、冬になったら里に戻るという自然な生活を送っています。まさに環境にやさしい畜産なのです。そして今は赤肉ブーム。にも関わらず、放牧型畜産の代表格である岩手県北上山系を中心とした日本短角牛の苦境は91年の牛肉輸入自由化以降深まっています。生産者が減少して行く中、明るいニュースとしては、岩泉町の短角牛は、イタリアのスローフード協会の「味の箱舟」に選ばれた事です。今後も北上山系の風土に溶け込んだ短角牛飼育に誇りと自信をもって継続してほしいと思います。
 

短角牛2

■主な産地/岩手県北
■生態と特徴
いわて短角牛は、旧南部藩時代に沿岸と内陸を結ぶ「塩の道」で物資の輸送に使われていた「南部牛」がそのルーツ。この伝統ある品種に明治以降に米国から輸入されたショートホーン種を交配し、品質改良を重ねた末に昭和32年に、日本固有の「肉専用種」として認定されました。赤茶色の毛色から「赤べこ」の愛称で地元の人々に親しまれてきました。飼養地域は旧南部藩の岩手県北を中心に秋田県、青森県、北海道などです。これらの地域はかつての馬産地が多く、馬産時代の牧野や周辺の林地を利用した夏山冬里方式、「里で生まれ、山で育つ」の放牧型飼育が続けられてきました。北東北の厳しい気候にも高い適応力を持っています。冬でも雪にある野原で過ごすことがあります。
種付けは「まき牛」と呼ばれる放牧地での自然交配で、3~5月ころに子牛が生まれ、母牛とともに秋まで放牧育成されます。秋に里に降ろされて、肥育素牛として販売されます。肥育期間はその後14~18カ月で、粗飼料と穀物で育てられ生後22~26カ月で仕上げられます。
 
その肉質は、脂肪が少なめの赤身肉が身上。グルタミン酸など旨味の基となるアミノ酸がたっぷりと含まれているのが特徴です。近年、ほど良い食感と噛むほどにあふれ出す肉本来の甘みと旨味から「赤身がおいしい和牛」として肉好きの人々から強い支持を集めつつあり、黒毛和種(霜降り肉)にも劣らない評価を受けています。しかしながら、独自の夏山冬里方式は、自然交配の為、通年出荷が難しい面も…。その為、現在の市場での流通量は国内の肉用牛の1〜2%程度に留まっています。
 赤みが強い短角牛は、熟成に向いているとされることもあり、急速に技術が高まっているドライエイジング製法などの熟成・保存手法とも相まって、そのすそ野が広がることが期待されているところです。

■食べ方
「肉らしい肉」「ヘルシーでおいしい」といわれるいわて短角牛は、黒毛和牛などと比べると脂肪分が少なめ。すき焼き、しゃぶしゃぶ、ステーキ、焼肉など、いずれも食べあきせずに、肉本来の旨味を味わえます。

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