おむすび 16+シェフツアー 2
投稿日:2012年7月23日 投稿者:sot
ソウル オブ 東北
シェフと山・里・海、産地連携プロジェクト 2
[シェフツアー] 2012.7.23
この企画(シェフと山・里・海、産地連携プロジェクトー 通称 ”シェフツアー” ) は、岩手県内で東日本大震災とそれに関連する損害を受けた農畜水産業に携わる生産者を支援し、岩手の生産物を知りシェフとの交流を深めるためのプロジェクトです。
ツアーの第2回目は、東日本大震災で被災した岩手県沿岸北部を訪ねました。
岩手県洋野町(ひろのちょう)の「天然ホヤ」、洋野町種市地区の宿戸漁港の「ウニ、アワビ」、同じく種市地区の栽培漁業協会の「稚ウニ種苗施設」の3ヶ所を視察しました。
東京から4人のシェフと、岩手県内からも9名の料理人や飲食店関係者が参加しました。
またこの日は、漁協女性部の方々を対象「チームおむすび」による料理教室も同時に開催されました。
1.開催名称 シェフと山・里・海の産地連携プロジェクト 2 + チームおむすび料理教室〈第16回〉
「海の幸と夏野菜のガスパチョ仕立て」料理教室
2.開催日時 2012年7月23日(月曜日)
3.開催場所 岩手県種市沿岸北部
4.主催 ソウル オブ 東北
5.協賛 キッコーマン株式会社、株式会社アッシュ・セー・クレアシオン、
岩手県県南広域振興局
6.実施内容 生産地視察、懇親会、料理教室、食事会
7.参加シェフ
菊地 美升:ル・ブルギニオン[東京]
高良 康之:銀座レカン[東京]
増田 稔明:ル・デッサン[東京]
伊藤 勝康:ロレオール[岩手]
駒場 利行:ロカーレ・アーシャ[岩手]
原田 良一:レストランあさひや[岩手]
中村 昌:ヌッフデュパプ[岩手]
狩野 美紀雄:ホテルメトロポリタン盛岡[岩手]
1ヶ所目は、天然ホヤを視察。
ホヤは、三陸沿岸一帯の特産品でしたが震災で養殖場がほぼ壊滅しました。
しかし岩手県の沿岸最北に位置する洋野町は、数少ない天然ホヤが水揚げされてきた場所でした。
天然ホヤがあがる洋野町の種市漁港はおよそ8メートルの津波で壊滅し、漁師たちの漁具を保管する小屋や隣接する建物も全て流されてしまいましたが、天然ホヤ漁に使われていた船とそこに積まれていた道具が運良く残ったため、地震の一月後から漁が
再開され、徐々に収量を上げて行きました。
はじめは海の中は視界が悪く真っ暗だったそうですが、この一年で少しずつ回復してきたそうです。
水揚げされたばかりのホヤを早速試食。みんな口々に、こんな味のホヤは初めて食べたと驚きの様子。新鮮なホヤはシャキシャキとした軽快な歯ごたえで、味も海水の塩味が効いている中にフルーティーさが感じられる独特な爽やかさがあります。普段食べているホヤとは味も見た目も違う天然ホヤを皆絶賛していました。
参加者の一人、「仙水」の小林俊彦シェフは、ホヤは苦手と遠慮がちでしたが、初めて食べた天然ホヤに「ものすごいインパクト。絶品です!」と笑顔がこぼれました。
2ヶ所目はウニの増殖溝。
洋野町種市地区の宿戸漁港では、浅瀬の岩盤を削って浅い溝を作り、そこにウニやアワビを放流して育てています。この海域はウニの餌となる良質な昆布があり、ウニの育成に最も適した条件が整った所です。
この一帯にも津波はやって来て、ウニは打ち上げられウミネコの餌になったものと、沖の深い所に持って行かれたものに分かれどちらも収穫には至れません。また漁港は岸壁が波によって大きく崩れ、作業施設も流されていまでも天井や壁をビニールでしのいでいる所が多数あります。
最後は稚ウニの種苗施設です。
この地区では人工種苗で稚ウニの育成を行なっていましたが、海沿いにあった水槽は全て流され、600万個の稚ウニは全滅だったそうです。岩手県栽培漁業協会種市事業所の箱石所長は「頭が真っ白になった」と1年前の惨状を振り返ります。中古や新品の水槽をなっんとかかきあつめて、現在300万個の稚ウニを育てています。
稚ウニは、ある程度大きくなると海の漁場へ放し、4年経つと成長し収穫の時期を迎えられます。
こうした育成の様子をうかがうのはシェフの皆さんもはじめてのようで、 「ウニが漁師や漁協の皆さんの綿密な計画で育てられているのを初めて知った、とても勉強になりました。」(スクレ・サレ/中西貞人シェフ)
「海産物は高価というイメージだったが、何年もかけて育成して収穫されることを知り、しみじみと価値を理解しました。」(ルカンケ/古屋壮一シェフ)という声も。
ソウル オブ 東北+キッコーマン チームおむすび料理教室
海の幸と夏野菜のガスパチョ仕立て
「チームおむすび」の料理教室
この日は、漁協女性部の方々を対象に「チームおむすび」の料理教室も開催されました。ホテルメトロポリタン盛岡の狩野シェフより、「海の幸と夏野菜のガスパチョ仕立て」の作り方を紹介。
女性部の皆さんは、ふだんはウエットスーツを身にまとい水中メガネをつけてウニやアワビの漁をしたり、施設で加工品を作ったりしている方々です。普段はお刺身としていただく、ホヤやホタテやヒラメが、野菜のガスパチョでいつもと違う一品になる様子に興味津々です。
「いつもそのままで食べてばかりだけれど、こうして手をかけると美味しいね。」と味を吟味しながら感心したご様子でした。 また、参加したシェフのみなさんがキッチントラックで様々な料理を披露し、海をバックに即席レストランとなりました。漁協の皆さんと一緒にいただき、「ホタテを野菜と合わせるなんてことは初めてだけれどおいしかった」「いちご煮はウニ、あわびが定番と思っていたが、タコやホヤもおいしいね。」と食材の新たな魅力を知っていただけたようです。
今回の視察を通して、「震災から持ち直そうという底力を感じた」(ラミティエ/宮下清志シェフ)「南部もぐりの方々の実直な人柄を感じた。そうした食材の奥にこもっているものを伝えて行きたい。」(ヌッフ・デュ・パプ/伊東拓郎オーナー)という感想が聞かれました。