シェフと山・里・海、産地連携プロジェクト8

投稿日:2013年10月7日 投稿者:sot


ソウル オブ 東北

シェフと山・里・海、産地連携プロジェクト 7
[シェフツアー]       2013.10.7

 

この企画(シェフと山・里・海、産地連携プロジェクトー 通称 ”シェフツアー” ) は、岩手県内で東日本大震災とそれに関連する損害を受けた農畜水産業に携わる生産者を支援し、岩手の生産物を知りシェフとの交流を深めるためのプロジェクトです。ツアーの第7回目は、東京から11名、青森、岩手県内から10名の料理人の皆さんと共に岩手県八幡平市を訪問しました。

 

■開催概要

 

1.開催名称   シェフと山・里・海、産地連携プロジェクト 7

 

2.開催日時   2013年10月7日(月曜日)

 

3.開催場所   岩手県八幡平市

 

4.主催     ソウル オブ 東北

 

5.協賛     岩手県農林水産部流通課  株式会社シュゼット

 

7.実施内容   生産地視察、懇親会、料理教室、意見交換会

 

7.参加者

 

[東京]

高良 康之:銀座レカン   増田 稔明:ル・デッサン

中西 貞人:スクレ・サレ  宮下  清志:ラミティエ

渡辺雄一郎:シャトーレストラン・ジョエル・ロブション

青木 健晃:ル・ボーズ   古屋 壮一:ルカンケ

小林 俊彦:仙水      松橋 ひらく:コッレベレート

末藤 隆博:ラ・カスケット 本多 哲也:リストランテ ホンダ

進藤 聡子:ポンピナール  加藤 清和:ラ・グラップ

[流通]

坂口 洋一:㈱太陽

[青森]

須田 忠幸:八戸プラザホテル   中野 大:八戸プラザホテル

 

[岩手]

狩野美紀雄:メトロポリタン盛岡    菊池 拓紀:メトロポリタン盛岡

駒場 利行:ロカーレ・アーシャ    中村 昌:ヌッフデュパプ

野中 恵介:岩泉        小石川 友樹:ラ・タヴェルナ

伊藤 勝康:ロレオール

敬称略 順不同

 

今回で7回目となったシェフツアーは、あいにくの小雨模様で始まりました。

本日の目的地は、岩手県民にとってはシンボリックな”ふるさとの山”岩手山のすそ野に広がる風光明媚な地域・八幡平市。農林水産業や畜産酪農業などが盛んな地域で、豊かな自然が育むさまざまな農産物・養植魚・食肉等の供給地帯でもあります。残念ながらその八幡平市も、震災後は福島第一原発事故に伴う風評被害の対象地域として例外ではなく、未だに深刻な問題を抱えているのです。また、先月16日には台風18号が県内を直撃したことで、田畑が浸水するなど、甚大な被害を被っています。

ルーデンス農場に到着しました。シェーバークロスブラウンという種類の茶色い鶏は、ケージ飼育ではなく、地面を自由に歩きまわり、土を掘り起こし、砂遊びや日光浴をさせながら平飼いで育てられます。「本来、食品というものは、安全性はもちろんのこと、食して元気の出るものでなければならない」という農場主・梶本さんご夫婦の信念のもと、餌はモミガラや・オカラ・トウモロコシ・米ぬかなど、できるだけ地場の食材を発酵させてから与え、地下50メートルから汲み上げる岩手山の伏流水を飲ませて育てた健康自慢の鶏たちです。その卵は”昔卵”と呼ばれ、黄身の色はレモンイエロー。黄身の色を濃くするための色素を含んだ特別な素材などはあえて加えていないため、色白の卵に仕上がるのだそうです。

シェフたちの興味は、やはり食材としてのハーブのようで、バナナミントの葉や食べられる花・ナスタチュームを早速口に含んで味わっていました。松橋シェフは、奥様からバターナッツというひょうたん型のカボチャをいただき、今日のメニューに登場させるようです。

 

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次に一行が訪れたのは、今回のメイン食材ともいえる八幡平サーモンを養殖している清水川養鱒場。水槽池を覗き込むと、体長数センチのかわいらしいニジマスの稚魚たちが群れ泳いでいました。大きさによっていくつもの池に分けて育てられる稚魚は、3年という時を経て身の引き締まった高品質のサーモンに成長するのだそうです。

近くには、「名水百選」に選ばれた金沢清水があり、毎分40tもの湧水を噴き上げています。年間を通じて低水温の、良質なこの水がなければおいしい魚は育たないとのこと。生産者・高橋清彦さん(愛さんのお父様)がこの地で魚を育てて40年余り。研究・改良を重ねたこだわりの餌と、徹底した品質管理の下に育て上げられた自慢のニジマスが、”八幡平サーモン”なのです。

 

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さて、いよいよ昼食・交流会会場のユウランド清水川に到着です。八幡平サーモンの生産者高橋さんご家族や、地元関係者の方々が出迎えてくださいました。

生産者の皆さんも続々合流。隣町岩手町からは田村孝美さんが根セロリを、盛岡・田村和大さんは人参持参で合流です。調理スペースは、屋根はかかっているものの、折り畳みテーブルを並べて設営したオープンキッチン。幸い、朝からの雨は止んで雲の切れ目からは青い空がのぞいています。色とりどりの食材や天然茸がテーブルに並べられたかと思うと、あっという間に取り分けられていく様は、さながら活気あふれるマルシェのようです。今日は、東京から参加の13名のシェフたちが、テーマ食材を使ってひとり1品以上のお料理を仕上げる予定。地元シェフや生産者の方々も、野菜洗いや下ごしらえのお手伝いでシェフたちをサポートします。

調理コーナーの一角では、伊藤シェフや八戸プラザホテル・須田シェフが八幡平サーモンや幻の魚・イトウ、そしてチョウザメをさばき始めました。八幡平サーモン独特の、赤みがかった濃い朱色が目に鮮やかです。この朱色は、アスタキサンチンという天然由来の色素を持つポリフェノールを豊富に含んでいるためで、抗酸化作用もあることから近年注目されています。チョウザメのおなかからは、キャビアが取り出され、参加者が興味津々で取り囲みます。料理教室を担当する宮下シェフも、定位置にスタンバイ。本日は、八幡平サーモンをそれぞれのバリエーションで使い分け、三品のお料理を披露してくださいます。料理教室がスタートすると、地元シェフ、生産者の方々が半円状に人垣をつくり、食い入るように真剣なまなざしでシェフの手元を見つめます。

 

1品目は、「サーモンと根セロリのレムラード」、2品目は「軽くスモークしたサーモンマリネの温かいジャガイモ添え」、3品目が「サーモンのエスカロップ オゼイユまたはバジル風味のソース」。宮下シェフは、八幡平サーモンの感想として、「輸入サーモンと比べて、驚くほど身に弾力があってやわらかく、全くクセがない」と高評価。見物の方たちは早速、あざやかな手際ででき上った3品を写真に収めていました。

そうこうするうち、辺りにはいい匂いが立ち込め、でき上がったお料理が次々に試食コーナーに運ばれます。シェフたちの渾身の一皿に、あちこちで歓声が上がっています。キッチンカーのオーブンで焼きあがったばかりの八幡平サーモンのパイ包み焼きを、銀座レカンの高良シェフが自ら取り分けてくださいます。その間にも、「バターを使っているのに、何でこんなに軽くてやさしい味なんですか」と率直な声が上がるなど、しばし参加者とシェフとの交流のひと時となりました。

「どれもおいしくて、どれが好きって言えない」、「はじめて食べる料理ばっかり」と、楽しんでいただけているようです。高橋さんのおばあちゃんは人参のエチュベを、こどもたちはトマトのパスタを何度もおかわりするほどお気に入りのようでした。

生産者のおひとりは、「手さぐりでつくっている農産物が、こうしてすごいごちそうになって、おいしいおいしいってみんなに食べてもらえると励みになる」とおっしゃっていました。

 

 

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シェフたちは、ここでしばし会場を離れ、八幡平市の酒造・「わしの尾」視察へ。文政十二年(1829年)創業という老舗の地酒『鷲の尾』は、別名「巌鷲山」とも呼ばれている地元の山・岩手山から命名されたものだそうです。早春の雪解けとともに山頂に大鷲が羽を広げたような残雪がくっきりと現れるところから、地元の人たちが親しみをこめてこの山を巌鷲山と呼ぶように、 岩手山の山麓からの湧水で醸造される「わしの尾」もまた、長年地元の人々に愛されている地酒なのでしょう。

高橋愛さんを囲んで、八幡平サーモンやキャビアの販路・売出し方についての意見交換となり、シェフたちからは、「このようなアピール力のある優良な食材は、国内に限定せず、世界を視野に発信するべきだ」とのアドバイスがありました。宴も終わり、一行がマイクロバスに乗り込む頃には、空には満天の星。都会と違って、ネオンも建物の灯りもない分、星のまたたきが鋭く感じられます。本当は、もっとゆっくりこの自然を、この土地をシェフたちに味わってほしい、という思いを残しつつ八幡平を後にしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

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