シェフと山・里・海、産地連携プロジェクト4

投稿日:2013年2月14日 投稿者:sot

ソウル オブ 東北

シェフと山・里・海、産地連携プロジェクト 4
[シェフツアー]         2013.2.27開催

 

この企画(シェフと山・里・海、産地連携プロジェクトー 通称 ”シェフツアー” ) は、岩手県内で東日本大震災とそれに関連する損害を受けた農畜水産業に携わる生産者を支援し、岩手の生産物を知りシェフとの交流を深めるためのプロジェクトです。

ツアーの第4回目は、岩手県岩泉町の短角牛の生産者と田野畑村の牛乳の生産者を訪ねました。

 

■開催概要

 

1.開催名称   シェフと山・里・海、産地連携プロジェクト 4

 

2.開催日時   2013年2月27日(水曜日)

 

3.開催場所   岩手県下閉伊郡岩泉町、田野畑村

 

4.主催     ソウル オブ 東北

 

5.協賛     株式会社 アッシュ・セー・クレアシオン、株式会社キッコーマン

 

6.実施内容   生産地視察、懇親会、料理教室、食事会

 

 

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岩泉町は宮古市田老町の北にあり、沿岸の小本地区が津波で大きな被害を受けました。幸い町の中心部は被害を受けませんでしたが、原発事故による風評被害で、農林水産物全般に影響が出ています。岩泉町は総面積992k㎡=東京23区+横浜市くらい=の広大な町です。

 

まず始めに伺ったのは短角牛の産地です。

盛岡から峠を2つ越えた北上山地の山奥の釜津田地区の「短角牛肥育部会岩泉支部長」の畠山利勝さんの牛舎です。畠山利勝さんは、短角牛の繁殖から肥育まで一貫して行い、年間約80頭を出荷する、生産リーダーです。飼料にこだわり、デントコーン主体で配合飼料やノシバなどの牧草を混ぜて育てています。デントコーンは牛用のトウモロコシで茎や葉とともに粉砕し、乳酸発酵させたものを与えています。通常は、外国産のデントコーンを使うのですが、畑山さんは周りの畑でデントコーンを栽培して使います。外国産の飼料を使わず、国産の飼料で育てた牛の中でも品質の良いものをプレミアムと呼んでいます。いま、畠山さんの所には10頭ほどがプレミアムだそうです。その後、牛舎の中の短角牛を見せていただくと、短角牛の牛たちの愛くるしさに目を奪われます。短角牛は山にいる間は、人間と接しないので、あまり寄りつかないそうですが、今いるのは出荷前の牛たちで、肥育期間中に人間から餌をもらっていたせいか、こちらに顔を近づけてきます。その顔はよく見るとそれぞれ違い、前髪が何ともいえずかわいいのです。シェフが手をさしのべると顔近づけ、鼻や舌を出してきます。短角と名前が付いていますが角は立派です。
その後、現状のお話を伺うと、福島原発事故以後、東京電力の要請で自家栽培してしたデントコーンの使用ができなくなってしまいました。その結果、2年もの間、外国産の使用を余儀なくされました。畠山さんはデントコーンの栽培を再開し、将来的には配合飼料も使わずに短角牛の肥育をしたいと語っていました。

【短角牛について】日本には「黒毛和種」「褐毛(あかげ)和種」「無角和種」「日本短角種」の4種類の和牛がおり、このうち「日本短角種」を「短角牛」と呼んでいます。短角牛のルーツは南部藩(今の岩手・秋田・青森の一部)沿岸と内陸を結ぶ”塩の道”の物資輸送に使われていた南部牛です。明治に入りショートホーン種を交配、品質改良を重ねた末に誕生しました。今でも岩手県が日本一の産地となっています。
短角牛の生産は「夏山冬里方式」と呼ばれる独特の方法で、肉は赤身が特徴で、霜降りになりにくい美味しい牛肉ですが、輸入牛肉と肉質が近いために、平成3年の牛肉輸入自由化で大打撃を受け、特有の「霜降り志向」もあって、市場価格は長い間低迷を続けてきました。
それでも近年は「食の安全」志向の高まりや、主に洋食のシェフ達からの高い評価もあり、厳しい状況ながらも安定した生産・出荷ができるようになりました。
しかし、「安全・安心」を売りにしてきた岩手の短角牛は、福島原発事故による風評被害で肉の価格が低迷し、生産者は明るい未来を描くことが難しい状況に追い込まれてしまっています。
また一時期(2011年8月)岩手県産肉牛の出荷制限が出たために、屠畜が遅れたり、市場での子牛の導入ができなくなり、今年の出荷に影響がでてくるかもしれません。(生後24〜29ヶ月で出荷されます。)
それでも岩泉町の生産者が短角牛にこだわるのは、岩泉町が短角牛発祥の地であり、明治時代の先祖が苦労を重ねて今の「日本短角種」を作ってきたとの思いがあるからです。特に釜津田地区は、汽車を乗り継ぎ横浜へ牛を飼いに行った歴史があり、短角牛を放つために共同で山を管理したり、短角牛のいない暮らしが考えられないほど、生活に深く関わっています。

1時間半ほどバスに揺られ、田野畑山地酪農牛乳「志ろがねの牧」に到着です。牧場の主で、昭和52年にこの地に入植し、山を切り拓いた吉塚公雄さんに牧場をご案内していただきました。急勾配の山を切り開き、乳牛を通年放牧、餌は山を切り開いて増やした天然の「ノシバ」や野草、そして自家生産の牧草のみという厳しすぎる生産規定を設けています。田野畑山地酪農は2軒の酪農家で取り組んでいます。ノシバは大雨でも猛暑でも、大地に根付き、乳牛たちを支えています。しかし大地と共に活きてきたからこそ、福島原発事故はその根底の部分を揺るがす出来事でした。常に放射能汚染の問題がついて回り、安全・安心で美味しい牛乳のために何度も定期的に検査を実施してを受けてきました。幸い、放射能は検出されませんでした。切り拓いた山を背に語る君塚さんの顔には積み上げてきた実績と誇りが溢れていました。そして暖かい牛乳をその場でいただき、交流会会場の道の駅へと向かいました。

 

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道の駅いわいずみ「レストラン大地工房」へ到着しました。そして、ここからル・デッサン」の増田シェフを中心に、チーム分けがされ、シェフたちが食材を物色し、メニューがどんどん決まっていきます。産者や農家レストランのお母さんたちを招いて「パッソ・ア・パッソ」の有馬シェフが料理教室を開催しました。有馬シェフの軽快なトークと料の腕前に、皆さんが釘付けになり、いままでにない食べ方に感心しきり。赤身肉が特徴の短角牛のおいしさをより楽しむためには、タルタルや煮込みがよいとシェフの皆さんがおっしゃっていました。タルタルは脂の多いお肉ではなかなかうまくできなくて、脂の少ない短角牛肉は本当にぴったりだそうです。厨房からは料理が続々と運ばれてきます。全部で30品近い料理が提供されました。どれも目を見張る料理ばかり。生産者の皆さんの目が輝きます。生産者のこだわり、それを生かすシェフの技、それぞれが最大限に引き出された会となりました。

 

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