第一回 産地連携プロジェクト3
投稿日:2012年6月6日 投稿者:sot
■シェフツアー「試食会」〜
かとうレポート9
その後、田んぼの脇にブルーシートをひいて、羊の試食会となりました。キッチンカーとオープンのコンロで、さっそくシェフ達が腕を振るいます。半身の肉がシェフの連携作業によって手際よくスライスされていきました。
まずは、肉の味を確かめるために、軽く炙ってそれぞれが口に運びます。真剣に噛み締めて味を確かめるシェフたち。感想を聞くと、「おいしい。優しい味がする」(菊地美升シェフ/ル・ブルギニオン)、「きれいな味で香りがある」(高良康之シェフ/銀座レカン)と、高い評価が出ました。
そして、羊のグリル、煮込み、スープなど次から次へと料理が出来あがっていきます。シェフ達の料理の手際の良さに、生産者も後ろから覗き込んで感心した様子。
そしてさっそく試食が始まりました。岩手の特産品の南部鉄器の鉄板で焼かれた羊のグリルに、生産者からは「赤みが残るこういう焼き方で食べるのは初めて。」「やっぱりプロの料理法は違う。うまいな〜。」との声が。うまいうまいの合唱に「だって愛情込めて育ててるんだもの〜。」と合いの手も入ります。
また、煮込みなどの料理がひとつひとつ仕上がるたびに、農家のお母さん方から「うわぁ〜、おいしそう。」と歓声が。「羊の煮込み料理は食べたがとっても美味しい。こんな素敵な料理になるなんて嬉しい。」と笑顔がこぼれました。試食をしながら、生産者達はそれぞれシェフに自身のこだわりなどを話し、自慢の羊をPRしました。
シェフの一行はこの他に、トマト農家と子牛の出荷をしている農家を巡り、一日の行程を終えました。
シェフの皆さんからは「岩手には、我々が使いたいと思うような良い食材がたくさんある事が分かった」「生産者と直接お話をして、きっかけができてよかった。」「食材に対する可能性は料理人が考えるべき事だと思う」といった言葉が聞かれました。震災の影響も含め、東京のシェフの皆さんに岩手の現状を理解していただくよい機会になりました。
そして、ホロホロ鳥生産者の石黒さんから、「今度は生産者側が東京に行き、自分たちの食材がどんなお店でどう料理されているかを知るツアーを企画したい。」という要望が上がりました。それに対して、銀座レカンの高良シェフが「うちでやりましょう。」と、即答で手を挙げてくださいました。今回の企画が新たな人の輪につながっていきそうです。(かとう)
その後:6月7日(木)
銀座レカンの高良シェフより、早速試作用として子羊の注文が入りました。
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- 投稿日:2012年6月6日
第一回 産地連携プロジェクト2
投稿日:2012年6月6日 投稿者:sot
■シェフツアー「ひつじ」
かとうレポート8
「梁川ひつじ飼育者の会」は、岩手県奥州市の江刺地区で綿羊(食肉用)を繁殖および肥育している9つの農家が集まって結成されたグループです。シェフ達はバスで、羊が飼育されている厩舎にやってきました。
このグループの農家は、休耕田を利用して羊を放牧し、牧草を主な餌とした飼育を行っていました。震災後、福島第1原子力発電所の事故の影響で奥州市では部分的に放射線が検出されるエリアが出てきた事から、同市内での屋外の肥育および牧草の給餌が禁止されています。
これを受けて農家は厩舎内での肥育を余儀なくされ、それまで不要だった飼料の購入が不可欠になったほか、もともと小規模の厩舎に、終日羊をおいておかなければいけないことになり、飼育頭数がさらに制限されています。
現在のところ各農家はこの飼育方法を守っており、出荷前に必ず行う放射能測定検査では検出限界以下の結果を得ており、出荷される肉の安全性は確保されています。課題は、餌を定期的に与える労働力と購入する飼料代という想定外の経費がコストとして加算されること。こうしたコストを鑑みた金額で取引してくれる新たな販路を開拓するべく模索をしています。
生産者のひとりの平野さんは「私達は、みずみずしい牧草をはんだ羊を育てることをモットーとしていたので、こうした状況はダメージが本当に大きい。採算はさらに厳しくなっていくだろう。」と語ります。
参加した中の「銀座レカン」高良康之シェフから「人が近づくと、寄ってくる羊と逃げる羊がいる。それが肉質にも現れていて、逃げる羊が多くいる厩舎の羊は肉質にばらつきが出る。」という話しが出たところ、平野さんから「放牧していると人懐っこくて穏やかな羊が育つようだ。厩舎にずっといると、どうも人にびっくりするところがあるんだよ。」と残念そうにつぶやいていました。放牧は出来ない状況ですが、今後もなるべくストレスのかからないように育てていきたいとおっしゃっていました。(かとう)
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- 投稿日:2012年6月6日
第一回 産地連携プロジェクト1
投稿日:2012年6月6日 投稿者:sot
■シェフツアー「ホロホロ鳥」
かとうレポート7
6月6日ー
初夏の風が吹く穏やかな天候に恵まれたこの日、東京から8人のシェフが岩手を訪れました。いずれも都内で名を馳せるフレンチやイタリアンの料理人の皆さんです。
この企画は、岩手県内で東日本大震災とそれに関連する損害を受けた農畜水産業に携わる生産者を支援するためのプロジェクトです。生産者と料理人のマッチングをはかる事で需要を生み出し、震災以降低迷する第一次産業に元気を取り戻す事を目的としています。
発起人はソウルオブ東北の東北シェフの代表を務める「ロレオール」伊藤勝康シェフです。
この企画は年内に4回の開催を予定しており、第1回は内陸の生産者を訪れましたが、2回目以降は沿岸部の津波の被害を受けたエリアを重点的にめぐる予定です。いずれも震災の打撃からの再起をめざしてそれぞれに努力をしている生産者を対象としています。
まずは「岩手花巻・石黒農場のホロホロ鳥」。「石黒農場のホロホロ鳥」は、花巻温泉郷のエリア内にある農場です。バスで細い道を分け入って進むと、山奥にひっそりといくつもの鶏舎がたたずむ場所に出ます。
アフリカ原産の「ホロホロ鳥」は、フレンチの高級食材として世界中で親しまれていますが、石黒農場の石黒さんは日本人の好みにあう鳥に育てるために飼料に工夫を施しており、赤米や黒米を主体にした米を主な餌としています。さらに温泉を利用した床暖房を使って鶏舎の温度管理を徹底するなど、こだわりの生産者です。日本で大規模に生産しているのはこの農家のみという事もあって、全国に取引先を持ちます。
その石黒農場では、内陸部にも関わらず地震の被害が実は今でも続いています。 この農場ではそれまで、年間4000羽のホロホロ鳥を出荷していましたが、昨年の3・11の地震以降度重なる余震の影響から、メスが卵を産まなくなってしまいました。これにより繁殖のサイクルが止まってしまい、地震のパニックで圧死した鳥も含めて震災後の生産量は2000羽と半減。
生産者の石黒さんは「余震は徐々に収まってきているのだが、なぜ卵を産まないのか全く分からず困惑している。かわりにフランスからひな鳥を空輸で購入しているが、高コストが悩みの種。かといって価格にそう簡単に転化も出来ず先の見通しが立たない。」と話します。訪れたシェフ達からは、単価や提供される部位など実際の取引を想定して質問が様々あがっていました。(かとう)
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- 投稿日:2012年6月6日