チャリティシンポジウム開催

投稿日:2011年5月31日 投稿者:sot

■すばらしい出会いに感謝です。

 

ようやくソウルオブ東北の活動のキックオフとなるチャリティシンポジウムが開催されました。東北からロレオールの伊藤シェフ、ポルコロッソの山崎シェフ、そしてアル・ケッチアーノの奥田シェフたちをゲストシェフとしてお呼びしました。そしてソウルオブ東北のプロジェクトメンバーのシェフたち30名あまりが参加し、シンポジウムで今、料理人ができることを考え、また、ビュッフェでは東北の食材を使って料理を披露しました。

 

朝から仕込に入り、東北のシェフたちを皆さんにご紹介しようと思い厨房に出向いたらすでに打ち解けて一緒に山菜を茹でていたり、お互いの料理を見合ったりとすでに私の紹介などいらないくらいでした。本当に昨年のCIAのイベントの時もそう感じましたが、料理を志すものは同じ厨房という舞台にたつと、あっと言う間に「仲間」になってしまうもののようです。このようなイベントの厨房はとても不思議な光景が見られます。懐石料理の瓢亭高橋さんが瓢亭たまごをつくるその前で、ロレオールの伊藤さんがこごみを茹でていたり、そのとなりでまたポルコロッソの山崎さんが椎茸にベーコンの詰め物してたり、またその後ろで奥田さんが牡蠣を取り出していたり、その前に美山荘の中東さんが伊藤さんが前の日に山で、とってきてくれた山独活の皮を剥いていたりするのです。こうしてジャンルも地域も違う料理人がごっちゃになって厨房にいるのが面白いのです。

 

110531_sotA1

 

控え室には、沢山の料理人さんが集まって久しぶりの再会を喜んでいます。昨年のアメリカのイベント以来初めて会うシェフもいます。ほろほろ鳥の石黒さんなど東北の生産者の方々もいらっしゃいます。初めてのシンポジウムの講師をしてくださる土壌学の野中教授、そしてやまけんさんもいらっしゃいます。あちこちで東北のシェフたちを囲んで撮影会です。このチャリティシンポジウムは沢山の方々の出会いを生み出しました。それだけでも有意義であったと思います。少し軽いミーティングをした後、シンポジウムの会場に向かいます。いよいよ始まります。どれくらいの方がきてくださるのかとても心配でしたが、有り難いことに、予想以上の参加数で椅子が足りなくて大変ご迷惑をおかけしました。最初のセッションは「農業と土」野中教授とやまけんさんにご登壇をお願いしました。第2セッションは、「今、料理人ができること」で東北のシェフたちから今の現状を伝えてもらい、それを受けて村田さん、熊谷さん、徳岡さんが考えを述べると言うものです。この2つのセッションについては、あらためて詳しくレポートします。動画も用意出来次第、アップ致します。

 

110531_sotB1

 

そのあとは懇親会として東北の食材をつかった皆さんの料理を食べる会です。ウェルカムドリンクは、岩手の山ぶどうのカクテルをお出ししました。お酒は東北の地酒各種、中に被災してしまった蔵元、浜千鳥さんのお酒もあります。そして、地ビール、岩手の八幡平の水と岩泉町の水とお茶を用意しました。食材は、それぞれに東北のものを使っています。山菜、椎茸、根曲竹、ごぼう、山葵、短角牛、佐助豚、ほろほろ鳥、川俣しゃもなどなど。それにしても30数名のシェフが並ぶとそれはそれは壮観でありました。会場に沢山の人があふれました。普段、なかなか眼の前で彼らが料理しそして話をする機会は滅多にありません。料理人も直接お客様と触れるとても楽しい機会です。見ているとホントに微笑ましくなってしまいます。私といえば、ゆっくり食べる暇もなくあちこちと動き回って、我の不手際の修正に余念がありません。掛け持ちばかりをして、至らなく大変ご迷惑をおかけしたと思います。それでも東北のシェフたちの現状を伝え、チャリティオークションも無事落札でき、皆様においしい料理を召し上がっていただき、そして、こうしてこの活動の出発をご報告できたことを嬉しく思っています。

 

110531_sotC_1

 

しかし、これは始まりであります。東北の食の復興は、日本料理の復興でもあります。これから私たちが何ができるのか、何をするべきなのか、次の食の未来をどうつくるのかを考えるとても良い機会だと思っています。これからの行動が次の世代のリーダーをつくり、新しい日本料理の価値を生むことでしょう。それは生産者とともに進む事であり、また、食はそれぞれの命と引き換えである事をあらためて認識し、自然への敬意を忘れないことを根本としています。このシンポジウムの意義は、人との出会い、考え方との出会い、そして行動のための入口であったと思います。これからもどうぞ温かいご支援をお願い致します。(実行委員 岡部泉)

東北シェフの活動4

投稿日:2011年5月24日 投稿者:sot

■「工夫」

 

かとうレポート6

 

5月24日。
ロレオールの伊藤シェフとアル・ケッチァーノの奥田シェフは福島県のいわき市に行きました。
二人の料理をいつも撮影しているカメラマンの長谷川潤さんのふるさとです。

 

今回は、避難所にある物資をいかに使うかがポイントでした。

 

メインは中華「美虎」の五十嵐美幸さんがもってきたチャーシュー丼、
それだけでは栄養に偏りがあるという事で、野菜を使ったおかずを二人が作りました。

 

一つめは、名付けて「豆腐のパルフェ」

 

伊藤シェフは、普段から避難所で何を食べたいかのリサーチをしていたところ
豆腐のリクエストがあったので、豆腐をメインにしたメニューを考える事に。

 

味付けをどうしようか考えながら支援物資の山を掘り返したところ、エゴマを発見、
南部鉄器の中華鍋(表面がざらざらしている)で煎ってお玉ですりつぶして
しょうゆと砂糖と水でたれをつくりました。
そして、カニの缶詰があったので、昆布の佃煮、花カツオであえました。
さらに、サバの水煮に納豆をトッピング。
これらを豆腐に添えて、「豆腐のパルフェ」の完成。
限られた材料を駆使した伊藤シェフの自信作です。

110524_05241

何とも不思議な一品ですが、評判は上々。

 

奥田シェフは、支援物資であったタマネギとピーマン、そしてコーン、ホタテ、
あさりの缶詰でサラダを作りました。
味付けに使ったのはホタテとアサリの缶詰の汁。工夫する事で、ひと味違ったサラダになります。

 

「多くの避難所ではいま、缶詰が豊富にあります。缶詰の種類は実にバラエティーに富んでいる。
これらの缶詰をいかに美味しく、飽きずに食べるかが課題です。持ち込む野菜を工夫する事で、
いろいろ考えていきたい。」(伊藤シェフ)

 

多くの方の善意と思いで届いた支援物資を無駄にしたくない、と伊藤シェフは言います。

 

通常ではこちらの避難所の食事を作っているのは、県の職員の方々なのだそうです。
メニューはご飯に缶詰、みそ汁、というようなものだそう。

 

いま、多くの避難所では食事の提供は限界に来ています。
あまりにも広範囲すぎて、行政の手は物資の提供で精一杯というところが多い。
栄養面やバリエーションを考えた食事がとれる状況をつくってあげるために、
新しい仕組みを考えなければならないと感じます。

 

(かとう)

東北シェフの活動3

投稿日:2011年5月23日 投稿者:sot

■「“食料”から“食事”へ」

 

かとうレポート5

 

5月23日。
ロレオールの伊藤シェフが向かったのは
陸前高田のリアス式海岸の半島にある長泂(ながほら)という地区。
この日は炊き出しではなく、“出張料理”です。

 

ひと月ほど前、この被災地に住む方でロレオールに食事をしにやってきた親子がいました。
地震からひと月たって、気分を何かかえることをしたいと伊藤シェフの店を訪ねたのです。
自分の店を選んでくれたことに感激した伊藤シェフは親子が暮らす被災地にいくことを約束しました。

 

震災から2ヶ月がすぎた今、被災地に求められるのは生きるための食料ではなく、“食事”。
食べるものが無い、という最悪の状況は過ぎ去りました。
しかし選択肢があって食べたいものを食べるという普段はごく当たり前のことを、
今はまだかなえられないのです。

 

「おいしかった。」と思ってもらえるようなひと時を作ってあげたいという思いで考えたメニューは、
ほろほろ鳥のグリル、野菜サラダ、ピラフ、野菜たっぷりポタージュです。
そこに中目黒の聖林館から提供していただいたピザ生地で焼いたパンを添え、
モンサンクレールの辻口さんから届いた和ラスクをデザートに。
さらに子供には宮崎県の生産者から届いたマンゴーゼリーをつけました。

 

この日の食数は230人前です。
訪れた場所は、流されずにすんだお宅に数家族が避難して一緒に暮らしているというエリア。
中には自宅が流されずにすんだという方もいます。
とはいえ半壊したままという家も多数で、
最近ようやく水道が通ったそうですが、まだ飲める水では無いそう。
それでもようやくお風呂に入れるようになったと言っていました。

 

南部鉄器の鉄板に、ほろほろ鳥の肉をのせ、
香ばしい香りと美味しそうな音がしてくると、
既に集まっていた近所の子供達も待ちきれない様子で
「こういうの、ずうっと食べてないよ。」と嬉しそうな様子。
聞くと震災以来、おかずでお肉を食べるのは初めてだそう。

110523_05231

↑ 嬉しくて思わずパチリ                          ↑ 肉汁がジューシーな、ほろほろ鳥のグリル

 

味わい深いほろほろ鳥は南部鉄器の鉄板で焼きます。
鉄器が熱を十分蓄えるので、表面はカリカリで中はふっくらとジューシーに焼き上がります。
味付けは“宮古(被災地)の塩”のみで十分。

 

伊藤シェフの塩をふる姿がかっこよくうつったらしく、
小学生の男の子が塩に関心を持ち、なめてみたいと言いました。
シェフが差し出した塩をなめてひと言、
「いつもの塩とちが〜う!」
周りにいた大人達もびっくりで、この子は将来シェフになるよ、とみんなで盛り上がった場面も。

 

「被災地では外食するお店もなく、なかなか他の地域に食事に行けるような
状況でもありません。
今回のような地域と、大規模な避難所は状況が違いますが、今後仮説住宅へ移る方が増えると、
同じような形で出張料理的なものが必要になってくると思います。
このような機会で食を楽しんでもらいながら、これからの復興の道のりを歩み始める皆様の
活力となっていただけたら幸いです。」(伊藤シェフ)

 

(かとう)

最新情報

アーカイブ

ページトップへ